コラム

2021年04月「グッドニュース」

 テレビのスイッチを入れてもコロナの話ばかりでうんざりする。ただコロナの情報自体は大切かつ必要なものなので、正確に言えばコロナを巡る人間模様にうんざりするのだ。
 一言で言うなら意地が悪い。誰それが何人で何時まで宴会をしただの、正直どうでもいい。人にはそれぞれの事情があるだろうし、悩みに悩んでリスクのある道を選ぶことだってある。他人には石ころにしか見えない物がその人にとっては宝石だったり、他人にはどうでもよく見えることがその人の人生では一番譲れないことだったりするのだ。
 何が正解で何が間違いかを誰にもはっきり示せない今、一人一人が真剣に考えた上での決断をお互いに尊重するしかないではないか。その人がどれくらい真剣に考えたのか、もちろんそれはわからない。しかし軽はずみな決断だと周囲が勝手に判断するのもおかしい。吟味に吟味を重ねて投じた一票と、一瞬の直感で投じた一票の重さが同じであるように、人の判断をとやかく言うべきではない。安易に批判を報じるべきではないのだ。

 …なんてことはきっと誰もがわかっている。批判したくてしているわけではないし、心の中ではそこまで言わなくてもと思っている人も多いのではないか。そもそも批判はよくないというこの文章自体が批判でもあるわけだから大いなる矛盾をはらんでいる。
 いつからこんな風潮になってしまったのだろう。言いたくもない批判を言い、聞きたくもない批判を聞かなければならない時代になってしまったのだろう。

 もっと褒めようよ。もっと讃えようよ。みんな頑張ってるんだから。
 もっと信じようよ。もっと愛そうよ。みんな必死なんだから。

 そういうニュースを見てみたい。

(文:福場将太)

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