コラム

2021年11月「カウント2 第三の男」

 いよいよ公式発表されたが、美唄すずらんクリニックは来年1月から新しい場所で再スタートを切る。まあ新しい場所とはいっても道路を挟んですぐ向かいなので、ほとんどお隣に引っ越すような感覚だ。現在の場所はJR美唄駅を利用して通院している患者さんたちにとっても便利な立地だったので、ほとんど所在地を変えずにすんだのはよかった。

 実は美唄すずらんクリニックの建物は今回の移転で通算三代目。初代は2006年12月の開院時の建物。場所は駅から少し離れた商店街で、1階が外来、2階がデイケアという構造で、当時はまだ院内に喫煙室もあったのが時代を感じる。
 二代目が2011年5月から利用している現在の建物。駅前のビルの1階であり、外来・デイケア・食堂・スタッフルームと全てが同じフロアで繋がっている構造。すぐにどの部屋へも行けるというのは物理的にも心理的にも距離が縮まった。また最大の特徴は厨房設備を備えたことであり、毎日できたてのおいしいごはんを食べられるというのはデイケアに来る患者さんにとってだけではなく、スタッフにとってもエネルギーの源だった。特に感染対策で心の医療に多くの制限がかかった去年から今年にかけては、ごはんが心の支えだったといっても過言ではない。

 正直、現在のクリニックのまま続けていけるのならそれでもよかった。しかし十年も経てば建物そのものの経年劣化は避けられず、そこに豪雨や豪雪が見舞うと雨漏りや浸水、停電といったトラブルが起きる頻度も年々増えていった。除雪作業もスタッフの力だけでこなすのは大変になってきた。やはり患者さんやスタッフの安全を守るのが第一、そのような考えで理事長先生からもゴーサインが出てこの度移転を決断するに至ったのである。

 三代目の建物の工事は順調に進んでいる。もちろん厨房設備はそのまま持っていくのでおいしいごはんはこれからも食べられる。環境変化というのは心の病を持つ患者さんたちにとってはストレスにもなってしまうけど、きっと新鮮なプラスの刺激にもなる。コロナの情勢を見ながらだが、来年は新しい建物でこれまでできなかったことにも色々挑戦していきたい。
 さあまずはあと一ヶ月、愛しいこの二代目クリニックで丁寧に仕事をしたいと思う。

(文:福場将太)

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