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コラム2025年10月「取り扱い注意」
お金の問題は難しい。例えば友人が引越しの人手が足りなくて困っている時に力を貸したり、人間関係で困っている時に知恵を貸したりなんてのは特にためらいはない。しかしお金で困っている時にお金を貸すのはおおいにためらう。自分に余裕があったとしても、相手を助けたいと思ったとしても、お金を渡すことはとてつもない無礼や不義理だったりするからだ。
名探偵コナンの『お金で買えない友情』というエピソードにおいても、ヒロインが絶対に親友からお金は出してもらわないとする姿があるべき関係として描かれていたが、寄付や募金とは異なり、プライベートな間柄におけるお金のやりとりは、大切な関係を傷付けてしまうリスクが極めて高いのだ。
医療や福祉の現場においても、当事者がお金で困っているからといって支援者がポケットマネーを出したり、公的な手続きを踏まずに財産を管理したりするのはタブー、望ましくないどころか悪の行為とされる。
お金とは不思議な物質だ。お砂糖やおしょうゆが切れたからちょっと貸してという関係は近所付き合いとして微笑ましいが、お金が切れたからちょっと貸してという関係はおぞましい。おかずやお菓子のおすそ分けは有り難いが、お金のおすそわけは有り得ない。誕生日プレゼントだって品物であげるのが基本、現金をプレゼントして好きな物を買ってもらった方が合理的だが、それはどこか気持ち悪い。同じ金額を渡すなら現金の方が使い勝手がよいのは明らかだが、それでも商品券や旅行券を贈る。
これはあげる側だけでなくもらう側もそうで、ご祝儀やお香典だったとしてもお金をただもらうのは居心地悪く、お返しをしないではいられないのが多くの日本人の心情のようである。
どうしてなのだろう。力や知恵やお米は貸しても、お金は貸しにくい。力や知恵やお米は借りても、お金は借りにくい。
金の切れ目が縁の切れ目。タダより高い物はない。
人間の信頼や尊厳に深く絡んでいるらしいこの物質。表記はされていないけれど危険物。みなさん、くれぐれも取り扱い注意。
(文:福場将太)






