コラム

コラム2026年03月「よき思い出を」

 2026年3月3日(火)、新篠津村で開催された『心の健康を考えるつどい』にお招きいただいて講演を行なった。新篠津村でお話をするのは約一年半ぶり、今回のテーマは『命を支える心のエネルギー源 笑顔の気持ちはどこから来るのか』。実は先月広島県で行なった講演の再演だったのだが、用いるスライドは同じでも聴いてくださる方と会場が変われば雰囲気も変わるもの、新篠津バージョンでリラックスしてお話することができた。

 今回特に時間を割いたのが、うつ状態の症状と治療について。つらいことがあれば一時的に落ち込むのは人間として当然の反応、全てが病的ということではない。その落込みが強過ぎる場合、長過ぎる場合には、うつ病などの心の病気を疑っていかなければならない。
 ただ、同じ様な出来事にさらされても、心の調子を崩す人もいれば崩さない人もいる。一概には言えないが、調子を崩さない人は自らの心を支えてくれる『何か』を持っているように思う。

 改めて考えてみる。その『何か』の一つは、懐かしい思い出ではないか。本当に楽しかった、嬉しかった、幸せだったと思える思い出があれば、たとえ今がつらくても、苦しくても、人は懐かしさから心のエネルギーをチャージすることができる。つまり、幼い頃や若い頃にいかに家庭や学校で楽しい思い出を作っておけるかが、その後の人生における心の健康に大きく寄与するわけだ。子供たちが意識的に思い出に残る経験をしていく姿勢ももちろん大切だが、大人たちがちゃんとそれができる環境や機会を子供たちに提供できるかが最も重要であり、それが難しくなっているのが現代社会の課題であろう。

 今回の講演会を企画してくださった保健師さんは前回と同じ方で、もう三十年近く新篠津村におられる。村の人たちのお顔はほぼ把握、路上でも講演会場でもみなさんと自然に世間話や冗談を交わしておられたのが、一年半前と変わらず印象的だった。
 そんな穏やかな時間。新篠津村での思い出も、きっとこの先僕の心を支えてくれるに違いない。

(文:福場将太)

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