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コラム2026年06月「幸福な職場」
美唄すずらんクリニックが今月末をもって休院となる。毎月綴ってきたこのコラムを書くのも、今回でひとまずお休みである。
まずは何より、休院によって通院されていた患者さんたちに少なからずの負担をかけてしまったことをお詫びしたい。最後にできることとして、誠心誠意一人ひとりの紹介状を書いたつもりだ。
過去のカルテを色々と読み返しながら、あるいはそれぞれの患者さんとの別れの言葉を交わしながら、痛切に感じたことは、自分にとってこんなに幸福な職場はないということだ。
診察では、ゆっくり患者さんとお話できる時間を与えられている。デイケアでは、患者さんと一緒に勉強したり合唱したりする機会を与えられている。そしてお昼には、いつも出来たてのおいしいごはんが提供されている。
持病の進行で視力を失った自分だが、それをほとんど気にすることなく仕事を続けられたのは、サポートしてくれたスタッフのみんな、そしてあたたかく受け入れてくれた患者さんたちのおかげ。同じく視覚障害を持ちながら医療の仕事をしている医者仲間と話しても、こんなに恵まれた職場はないと自慢できる。
ここでの一番の学びは「人間は持ちつ持たれつでよい」ということ。医師は全てにおいて完璧でなくてはならないと、かつての自分は思っていた。だから目の不自由な医者などそもそも存在し得ないのだと。
しかしそうではなかった。誰だって、自分に無理なことは助けてもらえばよい。その分、自分にできることは精一杯頑張ればよいのだ。視力を患者さんにサポートしてもらいながら、患者さんの心をサポートする。自立とは、けっして自分一人で立っていることではなく、誰かに支えてもらって立っていることでもなく、お互いがお互いを支え合う、そんな持ちつ持たれつの営みにちゃんと参加していることなのだ。
患者さんがお礼を言いながら診察室を出る時、「こちらこそありがとう」と返せる、こんなに幸せなことはないだろう。
スタッフとももちろんそう。人間はみんな一長一短、だからこそ持ちつ持たれつで働く。
さらに、白い杖を手に美唄の街を歩けば、タクシーの運転手さん、仕事で関わった誰かさん、授業で教えた学生さんなどが偶然見掛けてくれて、困っていた僕を何度も助けてくれた。そんなあたたかいこの街にどれだけ恩返しができたかはわからないが、この地で心の医療を続けて来られた幸運に感謝せずにはいられない。
紹介状を渡して患者さんたちに別れを告げる。僕にとっては最終回だが、もちろん人生の主役は患者さん本人、脇役の医者の出番が終わっても患者さんの物語はこれからも続いていく。誠に勝手な話ではあるが、今回のことがその人にとって一歩回復に近付くきっかけになってくれたらと願う。
気付けばもうすぐ二十年。この職場で仕事ができて、僕は本当に幸福でした。恵まれていました。
患者さん、スタッフのみんな、そして関係者のみなさん、どうかお元気で。
ありがとね!
(文:福場将太)






