コラム

コラム2018年1月コラム「CATCH A COLD IN WINTER, again」

 現在はウイルスによる感染症と判明しているこの病気、かつては宇宙の惑星からの影響によるものと考えられていたそうだ。まあウイルスだろうが惑星の力だろうが人間には見えないのでどちらが原因でもさほど違いはない。重要なのはウイルスならば医学によって治療薬が開発されているということだ。そう、この年末年始、私はインフルエンザを発症し自宅療養になってしまった。

 異変は12月24日の夜から始まった。突然の熱感と倦怠感、そして横になっても何故か訪れない眠気。手持ちの解熱剤と抗生物質を飲んでも症状は変らず、結局朝まで悶々と過ごす。サンタさんも引き上げた頃、ひとまず体を起こしていそいそと出勤。しかし院長先生やスタッフのみんなに促されすぐに帰宅し再びベッドに横になる…が、徹夜明けのはずなのにやはり全く眠くならない。
 冴えているようで回らない頭で考える、さあこれからどうしよう。この時点でもちろんインフルエンザの可能性は考えていた。ちょうど前の週の『こころの保健室』というプログラムで患者さんたちに解説した症状とも合致していた。そしてそのプログラムで私は「おかしいと思ったら早めに病院へ。インフルエンザだったら風邪薬や抗生物質は効かない。ちゃんと診断を受けた上で正しい治療を」とメッセージしていた。偉そうなことを言った手前やはり見本になるような行動をせねば、という不純な動機によって再び体を起こし午後から内科病院へ受診。いつも仕事でお世話になっている先生に年末のご挨拶をしながらの診察、無事インフルエンザが診断され五日間の出勤停止が決定した。点滴を受けながら美唄と江別の職場に連絡を取り、最低限の指示と申し送り。そして帰宅し再びベッドへ倒れる。
 そういえば朝から何も食べていないはずなのに空腹感は全くない。そして相変わらず眠気も全く感じない。音楽なんぞも流してみるが、やはり心と体はひと繋がり、余裕がないせいで全く味わえない。あまりの熱さに真冬にも関わらず部屋の窓を開け放ったりもした。とにかくお茶とミカンだけは口に運びながら、長い聖夜を私は過ごした。残念ながら精神科医はインフルエンザウイルスに抗する術を何も持たない。できるのはせいぜい自分を励ます言葉を探す程度のことだった。

 再び鉄や明けの26日。医学の進歩は素晴らしい。薬の効果が出てきたようで少しずつ熱感と倦怠感は薄らいでいった。とはいえまだまだ体は重たいし咳も痰も激しい。味覚も鈍ったままだが少しずつ食べ物のバリエイションを増やしていく。普段は週一個までにしているアイスクリームも解禁。そして28日からは解熱剤も必要なくなり皿洗いにも立った。音楽も楽しめるようになったので横になったままミニギターを抱え、好きな曲の音取り作業をしながら暇を潰した。そして30日、わずかな咳を残しながら出勤停止の五日間は明けた。悲しきかなこの日から職場は年末年始の連休が始まっていた。実家帰省もキャンセルし、私は別の意味での寝正月を過ごしたのである。

 今回天井に向かいながら一番考えていたこと、それは「働けないのはこんなに苦しいのか」ということだ。普段患者さんの就労を支援しながら、一番大切なことを私は知らなかったのかもしれない。逆に考えれば、忙しいとか疲れるとかほざきながら仕事をしている毎日がどれだけ幸福なことか。特に今回の病欠は一年の最終週だったこともあり、患者さんたちと最後のまとめができなかったことが本当に口惜しかった。でも頑張ることと無理することは違う、それは夏の風邪の時にちゃんと学んでいる。

 それにしても今回、どこでウイルスが入り込んだのか。夏の経験からあまり気張らずに働いていたつもりだ。生活リズムも乱していないし防寒対策に手洗い・うがいも怠らなかった。なのに何故?
 一つ思い当たるとしたらそれは『油断』。12月15日の江別クリスマス会、16日の心学塾、20日の美唄クリスマス会、そして22日のなかまの杜クリニック出向。12月の大きな行事であるこれらが終わればあとは一週間通常勤務をするだけだとどこかで気を抜いてしまったのかもしれない。役者や歌手が千秋楽の直後に風邪を引くという話を聞いたことがあるが、張り詰めた緊張を緩めてほっとした瞬間というのはウイルスが入り込みやすいのかもしれない。気張り過ぎてもダメで気を抜き過ぎてもダメなんて、力加減とは本当に難しいものだ。

 そんなこんなで「終わり良ければ全て良し」とはいかなかった2017年。綺麗に仕事納めができなかったのは残念だがもちろん今回の経験で学んだ心は今後に活かしていくつもりだ。そして突然の欠勤を穴埋めしてくださった院長とスタッフのみんな、受診に付き添ってくれた課長、差し入れに来てくれたスタッフや大家さん、買い出しに走ってくれた友人、そして私に働くという幸福を与えてくれている職場に心から感謝を伝えたい。

 みなさんもインフルエンザにはくれぐれも御用心。抗インフルエンザ薬の投与は発症から早ければ早いほど効果的です。少しでも異変を感じたらためらわず内科病院へ!

(文:福場将太 写真:カヤコレ)

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