江別すずらん病院からのお知らせ

江別すずらん病院 院長年頭挨拶

新年を迎えて今後の病院のあり方について院長の所感を2点ほど述べます。
認知症の検査で「皆で力を合わせて綱を引きます」と言う文章の復唱があります。
もちろん職員のみなさんは出来るに決まっていますが、実際に行動に移すとなると非常に難しい。
私と同世代やそれに近い方々はご存知と思いますが、一人だけ頑張ってもまったく綱を手繰り寄せては来れない。病院もそういう世界に近いと思われます。
私がここに赴任して7年目に入りますが、当初より個々のスタッフの実力は確実に伸びてきている。そして伊藤理事長のご尽力による次々と優秀な職員の参加で、個々人のスキルはさらにハイレベルになっていることが実感されます。一方で、これからは個々の実力を高めると同時にスタッフ間の連携を大事にする段階に入ってきたと考えます。すでに震災でのブラックアウト対応、入院患者食の維持に対する皆さんの協力でその連携力は示されておりますが、それをますますスキルアップさせていきたいと考えております。
たとえば最近の事例でこのようなものがありました。60歳代の統合失調症の患者さんが1月4日から急に四肢に力がはいらず、起立困難になり〝その都度不穏時の薬で対応してきたが〞という問い合わせがありました。それを受けたケースワーカーが精神症状では理解できない症状と判断、詳細なカルテへの記載とともに、不穏時の服薬は中止して翌朝すぐに主治医に受診するように指示しました。
翌朝の外来は主治医の担当ではなかったのですが、外来看護師が主治医に診察を即座に依頼。実際に私が診察してみると起立できないどころか両上肢の拳上もできない。さっそく電解質異常を疑い採血を指示。肥満が著しい患者さんで採血が出来ないとの連絡。ここで大切なのはいつまでも採血に頑張るのではなく、とりあえずまず主治医に出来ない旨を報告し、どうしてもしなければならない緊急性があるものかの判断を仰ぐことです。「とにかくなんとしてでもとってくれ」という怒鳴るような私の口調だったと思います。
そして検査に出すとカリウムとCPKを再検中という連絡があった。
ここでも重要なのは再検中と言う連絡です。その報告で間違いなく低カリウム血症で、しかも信じられないCPKの高さが疑われ、直ちにその最初のデーターを見せるように指示しました。案の定、カリウムは1.6、CPKは8000でした。内科の先生にすぐに駆けつけて戴きました。カリウム補正中に心停止が起こるかも、しかも横紋筋の挫滅も始まっているようなので一般内科よりも救急へとのアドヴァイスでした。
さっそくケースワーカーを通して近隣の急性期病院の救急担当医にお願いしました。医師に依頼状を書く際も慌てていて簡単な漢字も出てこない。ケースワーカーから〝あの人徳の徳です〞などと援助を戴き、大急ぎで救急車を手配しました。救急車に乗れば心肺停止でもなんとか蘇生でつなげられるだろうと一安心した次第です。
ここで私が言いたいことは自分だけの仕事の完成でなく、周囲との連係でいかにスムーズに的確に事態の解決に臨むかという姿勢です。関与したスタッフの協力で一命が取り留められた症例でした。
 もう一点強調したいことは前述の症例に示されるように地域の要請に合わせた医療の展開です。忘年会でも言いましたが、私の母校が属している大阪大学の標語に「地域に根差して、世界にはばたく」「地味で輝く」とあります。
地域に根差すとは実は地味な営みの連続です。しかしその営みのなかに新しい発見があり輝きがあるのです。こんな看護をして患者さんを救えた。こんな対応をして患者さんに喜んでいただいた。家族に感謝された。何でもよいのです。とにかく新しい試みにチャレンジして、その結果を共有して外に発信する。
医師のみならず看護、パラメディカルその他あらゆる職種で学会発表にまでつなげられる組織風土を今後作り上げたいと思います。
個人的なことですが私は小説を読むのが好きで、最近は自宅でも読みふけっておりますと妻からちっとも家庭のことを手伝ってくれない!と追求されますので近頃はJR内で読書することにしております。皆さんと口をきくことが嫌でそうしているわけではありませんので悪しからず。最近読んだ小説に以下の2冊があります。
ドストエフスキーの「罪と罰」は19世紀後半ペテルブルグの場末を舞台として不朽の名作として生まれました。エミール・ゾラの「居酒屋」は同じく19世紀後半パリの貧民街を舞台として生まれ、150年後の今も読み継がれています。何も江別が場末・貧民街と言っているのではありません。札幌の中心から距離をおいた近郊ゆえに、特有の地域事情を大切にすることを通してこそ、世界に羽ばたく時空を超えた新しい気づきと医療が展開されるものと信じているのです。150年後を夢見て頑張りましょう。

(年頭所感:江別すずらん病院 院長 安田)

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