コラム

コラム2023年9月「パワーランチの男」

 クリニックが現在の建物に移転してそれなりの時間が経った。使い勝手という点ではかなり慣れてきてはいるのだが、前の建物との一番の違いはフロアが二つに分かれているということだ。それによる弊害としては、1階と2階のスタッフの交流が減ってしまったことが挙げられる。コメディカルはまだ昼休みに全員2階へ集合しているのでさほどでもないが、ドクターは基本昼休みも1階の診察室にいて食事もそこで摂る。当クリニックの名物である出来立てごはんのおいしさは建物が変わっても全く衰えていないのだが、前の建物ではドクターもコメディカルも一緒に食堂で食べていたことを思うとそこは少し寂しい。

 そして寂しさだけでなく、仕事の面でも損失が大きいことに最近思い至った。朝の申し送りやカンファレンスでの情報共有はしていたとしても、スタッフとの何気ない雑談の仲で得られる患者さんの情報、治療のアイデアというものは非常に大きいのだ。昼食を摂りながら講演を聴くランチョンセミナーというものもあるが、やはり食事というリラックス状態の方がすっと口から出ること、すっと頭に入ることはたくさんある。

 もちろん別れて食事をしていた理由には感染対策もあったわけだが、コロナも5類になってもう久しく、そろそろスタッフみんなでの昼食を再開させようと先月院長がおっしゃった。このようにスタッフが一緒に昼食を摂って自然に相談や情報共有をすることを『パワーランチ』と呼ぶ憂そうだ。
 そんなわけで今月から週一回開催されているパワーランチ。仕事の話題や趣味の話題をしながらの食事は、情報の共有の上でもスタッフの親睦の上でも極めて有益であることを思い知った。もちろん気軽な昼食なので義務的にする必要はなく、話す気分じゃない時は黙って食べればよいし、さっさと席を立ちたい時はそうすればよい。

 さて、おいしい食事と気ままな会話でパワーをもらって、また午後の診療も頑張ろう。

(文:福場将太)

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