コラム

コラム2023年12月「エネルギーチャージ」

「今あなたを支えている物は何ですか?」
 先月とある業界紙の取材でインタビュアーさんにそう尋ねられた。自分を支えている物…革めて考えてみると何だろう、自分が自分の力だけで立っていられているはずはないから何かに支えられているのは間違いない。一瞬答えに窮したが、思考が回転するより先に僕の口はこう答えていた。
「思い出と出会いです」

 思えば僕は学生時代が大好きだった。幼稚園・小学校・中学校・高校そして大学、もちろんつらいことや悲しいこともあったが、それでも十分にお釣りが来るくらいのたくさんの思い出がある。例え今がつまらなくても、うまくいっていなくても、あの頃あれだけ楽しかったんだからと思えばそれで今を乗り切れる。そんな学生時代を過ごせたことは本当に恵まれていると思う。
 また出会いについて考えても、僕は本当に出会いに恵まれている。学生時代もそう、社会人になった今もそう、周りにいてくれる優しい人たちのおかげで自分は存在できている。これからまたどんな素敵な出会いがあるんだろうと考えるだけで、明日を生きるのが楽しみになる。

 そんなふうに思い出や出会いにコンセントをつないでエネルギーをチャージしながら自分は生きている。もちろんエネルギー源は人それぞれでよいのだが、精神科に通う患者さんの中にはそれが乏しい人も多いのかもしれない。本人の生き方だけの問題ではなく、生まれ育った環境のせいでエネルギー源に恵まれなかった場合もある。どうして頑張らないんだと僕たち支援者はつい思ってしまうが、エネルギー源がないのに頑張れというのは無理な話。かといって頑張らなくていいと許容し過ぎても人は堕落してしまうから本当に難しい。

 みなさんは普段何からエネルギーをチャージしているだろうか。頑張れない、踏ん張りが利かないと悩んでいる人は、まず心のコンセントをつなげるエネルギー源を見つけるところから始めてみてはいかがだろう。
 この仕事は患者さんとの思い出や出会いがたくさん。きっとそこからも大いにエネルギーをチャージさせてもらって働けている。今年も本当にありがとうございました。

(文:福場将太)

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