コラム

2012年01月『MY OLD FRIENDS』

 1月2日、年始に実家にいたのはもう何年ぶりだろう。でもそのおかげで懐かしい友人たちと再会できた。なんと小学校の同窓会と中学・高校の同窓会が同じ日に行なわれたのだ。時間帯がずれていたので多少無理はあったがなんとか両方に参加できた。正直、僕は同窓会というものがあまり好きではない・・・というか今までなんだか妙な抵抗感があって、これまであまり大規模なものには参加しないようにしていた。なんていうか、そう、好きだった映画の続編を観たくないような、あの輝いていたキャラクターたちの後日談を知りたくないような、そんな気持ちだ。思い出は思い出のままそのまま封印したい、あの大きな夢を描いていた仲間たちの結末なんて見たくないし自分も見せたくない・・・・そんなロマンチストのふりをした臆病者だったのだ。しかし、今回は行ってみようかなと思った。幹事のみなさんのありがたい熱意にほだされたというのもあるし、昨年はいくつかの別れが重なったのでやっぱり会える人とは会える時に会っておかなくちゃってのもあったと思う。でも、多少無理をしてでも参加してよかったと今は心から思う。

 まずはお昼からの小学校の同窓会。オフィシャルなものでは無かったが連絡のついた15人ほどの同窓生が集まった。中学校から地元を離れてしまった僕としては、20年ぶりに会うやつらがほとんどだった。正直最初は「あれ誰だっけ」って感じだったけど、話しているうちに不思議なもので記憶がどんどんよみがえる。あ、そうそうこいつはこういう喋り方だったとか、こういう性格だったなとか、どんどんあの頃の教室の場面と一致していく。それにしてもまあ・・・なんと激しい広島弁。男子も女子も訛りまくっている。今回参加していたやつらの多くは地元に残り、ずっと地元にいるやつらだから余計そうなんだろう。「お前今何しょんの」「あんたもはよ結婚せいや」「ほじゃけえのお」などなど方言の嵐・・・でも気づけば僕もそうなっている。まさに三つ子の魂百まで。中にはもうとっくに一家の主になってるやつ、店を経営してるやつもいる。家の家業を継いでいるやつも少なくない。「今度お前の店に飲みに行くけえのぉ」「「わしが焼いた焼き鳥食べにきいや」「あんたんとこのケーキ高いけえ、もっと安うしちゃりんさいな」などなど・・・方言でお互いの家業トークや青年団トーク、町内会トーク・・・。もし自分もあの時遠くの中学を受験しなければずっとこの町に居て、みんなとこうやって暮らしていたのかもしれない。そんな人生もよかったのかな、なんてちょっぴり思ったりした。そして「あの頃誰が好きだったか」なんてお決まりのお題。意外な真実、裏切り、失恋の発覚・・・でもそれも全部全部笑いの中に溶け込んでいく。同窓会には不思議な力があるんだな。もちろんみんな楽しいことばかりの毎日じゃないだろう。嬉しい知らせもあれば悲しい知らせもある。でも笑う、ここでは笑う、それしかないことをみんな知っている。公立小学校は生徒それぞれの家庭環境・学力・経済力などに大きな差がある。でもだからこそ余計にこのメンバ?がそろった偶然がとても素敵に感じる。たまたま同じ年に生まれてたまたま同じ学区に家があった・・・それがとても素敵な偶然。いつか僕もこの愛しい町に戻るのだろうか。「まっとるけえはよかえってきんさいや」・・・ありがとう。でもまだもう少し旅を続けていたいんだ。

イメージ さて、夜は中学・高校の同窓会。今度は呉市から広島市に移動した。こっちはオフィシャル企画なので参加者も60人を越え先生方も参加している。卒業後に会ったやつらもちらほら見かけるし、久し振りに合うやつもそんなに思い出の中の姿とギャップはない。こちらは、なんやかんやで情報が回ってくるメンバーなのでそんなに意外な真実が明らかになることはないが、小学校時代より鮮明な想い出が酒の魚になる。いつかこのコラムでも書いた体育祭の話し。修学旅行、部活・・・話題は尽きることは無い。人数がもともと多いぶん、どうしてもいくつかのグループには分かれてしまうけど、それでもそんなに親しくなかったやつとでも結構話が進んだりするからやっぱり同窓会って不思議だ。そして何よりの収穫は先生方とお会いできたこと。1月2日はやっぱり同窓会が多いみたいで先生方も同窓会かけもちなのだという。しかしそれでもちゃんと生徒の事を憶えていてくれる先生って仕事はやっぱりすごい。「最近の生徒は難しくてねえ・・・」なんて話題も先生からあったりして、今はお互い大人同士だというのがなんだか不思議。とある女の先生は「あの頃の私は今のあなたたちと同じ年齢だったのよ」・・・そう考えればすごいことだ。当時はさんざんおばさん扱いしてすいませんでした。うちの中学は受験で合格した後抽選で本当の合格が決まる。あの時別の番号札を引いていたらこの仲間の輪の中にいなかったのかと思うと・・・またまたとても素敵な偶然を感じる。あんなに同窓会への参加をためらっていた気持はどこへやら、終電ギリギリまで二次会も続いたのでした。

 とまあそんなわけでわずか1日で12年間の思い出を駆け抜けたわけですが・・・同窓生ってやっぱり財産だと改めて思いました。作ろうとして作れるものではないし、大人になると出会いや別れを選ぶようになってしまうからなおさら貴重に感じる。ある意味、否応無く同じ季節を共有する仲間をあたえられる機会なんて・・・人生においても学生時代しかない。
 これから先、それぞれの人生にどんなことが起こるだろう。またこうやって笑い合えるためにまたそれぞれの毎日をがんばっていこう。わかってる、どうしようもないことだってたくさんある。もう会えないやつもいる。でもみんなとたまたま同級生だったことを心から幸せに感じます。心から誇りに思います。たまたまそこに居合わせただけ、それが出会いでしょう。きっと運命とよべるのでしょう。

(文:福場将太 写真:瀬山夏彦)

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