コラム

コラム2012年09月『手工芸のススメ』

手工芸のススメ

こんにちは。作業療法士の仕事をしている者です。
突然ですが、仕事って何なんだろうなぁと、日々思うのです。
私たちはなぜ働くのでしょう。

多くは、給料をもらって、それによって生活していくためでしょうか。
でも、それだけではなく、きっとみんな「誰かの役に立ちたい」という思いもあるのではないでしょうか。普段忙しく働いていると、そんなことを思っている暇はないのかもしれませんが。
人の生活は大まかに「生きる」「楽しむ」「働く」に分けられます。分け方は人それぞれで、小学生にとって「働く」とは学校に通うことを指すだろうし、専業主婦にとって「働く」は家事をこなし家庭を維持することを指すでしょうか。ある人にとって食事は「生きる」ことでも、別の人にとっては「楽しむ」ことかもしれません。あるいは、入浴が身の清潔を保つための「生きる」だけでなく、温泉を「楽しむ」人もいるでしょうね。人の生活活動のどれもがはっきりとは分けられず、人によってその3つの要素がさまざまに重なり合っているようです。
人の生活においては、誰であってもこの「生きる」「楽しむ」「働く」の要素を備えていると思います。というか、備えているのが、きっと普通。

では、入院されている患者様はどうでしょう。
患者様は何かしらの苦しみを抱えて入院されています。働きたくても働けない、楽しみたくても楽しめない。その苦しみは根深く、簡単に解決されるものではありませんが、入院しているから社会で生活している人たちと同じような生活ができないということは、なるべくあってはならないことだと思います。
どうしても入院していることで、今までできていたことができないということは残念ながらあります。お酒が飲めない、夜中に自由に出歩けないなどがそうです。でも、普通の人の普通な生活を取り戻すというリハビリを目指す作業療法士としては、せめて「生きる」「楽しむ」「働く」は入院中であってもできる環境でありたい。

ずいぶんと長くなってしまいましたが、それによる「働くって何だろうなぁ」なのです。
入院生活においては、働いて給料を得ることはできません。なので、生活をしていくための「働く」ではないようです。そうすると、やっぱり「人の役に立つ」こと?
まだまだ私は経験不足で、日々自分の作業療法は患者様の役に立っているのだろうかと思うのですが、そんな中で患者様に「働く」ことを取り入れようと頑張っているのが、手工芸。
手工芸も、作れるものが増えてくれば、作品をほかの人に使ってもらうことができる。もちろんそんな作品を完成させるためには、集中力、意欲、理解力、根気などなど、いろんな能力を求められるので、かなりハードルは高いのですが、それでも何とか、作業療法における手工芸が患者様の「働く」になってほしい。

写真の、アイロンビーズと呼ばれる作品が、その第一歩のようなものです。手工芸に興味を持ち、物作りの「楽しむ」を知ってもらえたら、それが徐々に人の役に立つ作品を作る「働く」に変わっていくのではないか。私が作業療法士になるための学校に通っていた時、授業の中で「仕事と遊びの連続性」という言葉が出てきたのを思い出しました。

患者様の中には、きっと完成したら素晴らしいものができるぞ!という作品に取り掛かられている方もいらっしゃいます。もし完成したら、またこのコラムで紹介させていただく予定です。乞うご期待!

(文・写真:リハビリテーション課)

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