コラム

コラム2025年09月「依存症課の冒険 豪雨の函館へ」

 2025年9月14日(日)、全日本断酒連盟の第53回北海道ブロックの大会が函館で開催され、講演のために依存症課チームもその地へ赴いた。
 前日の昼に江別すずらん病院を出発して車で向かったのだが、道中はあいにくの雨。到着した夜の函館も土砂降りの中にあった。雨音を子守歌に眠りにつき、一夜が明けたら雨も上がって一応の晴天。勇んでホテルを出、会場のネイパル森へ到着したのである。

■演題

 依存症と視覚障害に共通する回復の意味

■セットリスト

第1章 依存症治療と視覚障害との歩み
第2章 3つの回復
第3章 回復のための心得
第4章 みんなが暮らしやすい社会
第5章 まとめ

 アルコールとはどんな物質か、依存症とはどんな病気でどんなふうに治療をするのか。もちろんそれらは大切なテーマであり、特に依存症の治療に置いては基礎知識をしっかり理解することが回復に直結する。なので今回もそこをメインに話す講演にしてもよかったのだが、せっかくなので自分ならではのエッセンスを盛り込むことにした。

 それが「視覚障害と比較しながら依存症を考える」というものだ。僕の持病の網膜色素変性症は眼科の病気。精神科の病気であるアルコール依存症とは一見全く違うものに思えるが、実は共通点も多い。
 どちらの病気も、現代の医学で『治す』ことはできない。ただし『回復する』ことはできる。ここが一番大切なポイントであり、その決め手は『新しい生き方作り』である。この辺りについて、少しでも何かを感じていただけたのなら嬉しい。

 改めて思う。依存症は『頼る』という人間らしい営みに起因するとても人間らしい病気。この病気を探求することは人間を探求することに等しい。これまで患者さんやスタッフとたくさんのミーティングを行なってきたが、そこで得た学びは自分にとって視覚障害からの回復に大いに役立った。
 精神科での気付きが眼科で活かされる、というのも不思議な話だが、それもまた大切なこと。他者の苦労に目を向けることが、めぐりめぐって自分の苦労を乗り越えることにつながる。相手をわかろうとする姿勢こそが、空いてからわかってもらう一番の近道なのだ。

 時間がなくて、ラッキーピエロも長谷川ストアも味わえずの帰還となったが、ぜひまたゆっくり函館に訪れたいと思う。90年代が中学・高校時代だった世代としては、GLAYもJUDY AND MARYも青春のBGM。
「会いたいから 恋しくて あなたを想うほど」
「あなたと二人で このまま消えてしまおう」
 次回の旅では、雪の中でぜひそんなフレーズを口ずさみたい。

(文:福場将太)

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